鈴木麦太朗/題詠blog用


by yuaruhi
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題詠blog2007まとめ(その2)

題詠blog2007は完走できなかったため2012年10月26~29日に再挑戦しました。
いないずみ。さんの七日間百首に乗ってツイッターで発表した作品です。

000:(プロローグ)  五年前走りはじめたマラソンの今年ようやくゴールをめざす

001:始  始発から終点までをだんまりと座りつづけたひとのぬくもり
002:晴  晴れの日も大雨の日も母の日も畳の下にある当たりくじ
003:屋根  山鳩が屋根にとまって飛びたてば ああ、しっくいのはがれは進む
004:限  脳みそがぐんぐん小さくなったなら命の限り生きるほかなし
005:しあわせ  解釈が違っているかもしれないが歩いていればしあわせになる
006:使  ひとときは使徒行伝にはさまれた栞であった診察カード
007:スプーン  スプーンを曲げるちからでスプーンの凸と凹とを逆にしてくれ
008:種  歯ごたえとあわい甘みに安らいでかぼちゃの種をかりかりと噛む
009:週末  おや指とひとさし指の爪と爪こすりあわせてつぶす週末
010:握  握ったら血だらけになりだれの血だだれの血だってさわぐ父親
011:すきま  かなしいね色えんぴつで色づけて欠けたピースのすきまを埋める
012:赤  そういえばあんまり見かけないですね赤い出窓に赤いカーテン
013:スポーツ  中学でそこそこ足が速かったばかりにひらくスポーツショップ
014:温  寒帯と亜寒帯と温帯と亜熱帯と熱帯がある
015:一緒  いつも一緒にいたかったとか歌うとき泣くひとは泣くうすずみの夜
016:吹  しびれるかあるいは死ぬか知らぬまま吹き矢に倒れてしまう野猿よ
017:玉ねぎ  玉ねぎは五個か六個に分けられてガレージ奥にぼんやりしてる
018:酸  あくる朝こみあげてくる胃酸にはレモンの香りはついていません
019:男  フォルダのそのまた奥のフォルダの男にはある隠したいもの
020:メトロ  まっ暗でわからないのをいいことにときにメトロは近道をする
021:競  うつせみを乗せて無料のバスはゆく競輪場から最寄の駅へ
022:記号  住みやすい家みたいだと思いつつト音記号をたどるなめくじ
023:誰  西からの風たえまなく吹いていて誰のものでもないわたりどり
024:バランス  キャクゼンキョキャクゼンキョって鳴きながら夏縁台でバランスをとる
025:化  都会へと向かう列車のなかにいて化け猫ミケは髭ととのえる
026:地図  国土地理院二万五千分の一の地図をただひたすらに買い足してゆく
027:給  てのひらにまりもまるめるひとたちの時給思えば夜は深くなる
028:カーテン  ふわふわと夜行のバスに運ばれてカーテンは布、布のにおいだ
029:国  「国民」ともののはずみに言うときの何ともいえぬ後ろめたさよ
030:いたずら  いたずらの過ぎてしまった夜のこと勝手に流れる涙は何だ
031:雪  またたくまてのひらのうえに溶けてゆく雪のかけらようなよろこび
032:ニュース  雨模様、おもてを見ればわかります。そして始まる昼のニュースは
033:太陽  太陽から次から次へと放たれる光のつぶは戻ってこない
034:配  チロルチョコひとりひとりに配られて春はのどかということもなく
035:昭和  鈴木さんどうですかって言われたら昭和の歌のページをぱらり
036:湯  白湯という選択肢なくしかたなく紅茶をたのむ女優を思う
037:片思い  片思いとか仲たがいとかかきまぜてどろんどろんのクリームソーダ
038:穴  中穴を狙いますって言うひとの元気のよさに打たれています
039:理想  手の届くところにあらゆるリモコンを置いて理想の部屋 すきま風
040:ボタン  OFFボタンぷつんと押せばこともなくあわれしずかな夜はあからさま
041:障  ぬばたまのクロオオアリはつねひごろ障害物をよけつつあるく
042:海  「珍味、珍味、珍味はいかが」と唄ってて海のにおいがすればあやしい
043:ためいき  描かれた顔ふくらんですぐさまに風船はためいきひとつを吐いた
044:寺  山寺にたぬきは集いこげ茶色ばかり減ってくアクリル絵の具
045:トマト  湯剥きして砂糖をかけて食べるのだ遠くとおくにトマトは逃げる
046:階段  階段のしたにおのずとできあがる三角形のうつろにも春
047:没  浮力とは何たるかを知る湯のなかに戦艦ヤマトを沈没させて
048:毛糸  毛糸だまを好んで食べる虫たちよこれは不味いぞアクリル毛糸
049:約  約束をしてるわけではないけれど焦燥はじわり未来からくる
050:仮面  とろとろとかわるがわるに思うこと月光仮面のメロディーふたつ
051:宙  地面からわずか百キロ上空は宇宙と聞いて思う薄紙
052:あこがれ  あこがれは虹のようですいつだって雨あがりには空をみあげる
053:爪  爪と爪こすりあわせてつぶしてる週末、週末、やがて終末
054:電車  となりあう線路を走る電車にはぎっしりのひと ホンモノなのか
055:労  聞いたってすぐに忘れてしまうから苦労話は何度も聞ける
056:タオル  世の中の太朗は惑うまちがえてTAORUと打てばタオルが出てくる
057:空気  まずはじめ空気を吐くのが深呼吸 秘伝のように先生は言う
058:鐘  チャイムにも色々あってあるときはリアルな鐘の音におどろく
059:ひらがな  電線はすべて地中に埋められてゆっくりあるくひらがなの街
060:キス  祖父母父母兄姉弟妹がかたまりながら見るキスシーン
061:論  結論が先、結論が先、と教えられ後輩に言う、結論が先
062:乾杯  だらしなくなった口許さらしつつあらためて乾杯 あとは忘れた
063:浜  浜松と宇都宮の熱き闘いよそれはそれとして王将餃子
064:ピアノ  文学はピアノを溶かし映像はピアノを燃やす 立ちつくすのみ
065:大阪  淀川を越えてようやく大阪という心地して電車はすべる
066:切  別れたら再び会うということはなくて切り取り線は破線だ
067:夕立  夕立ちは土のにおいを立ちあげて千年なんてあっという間だ
068:杉  家々の壁にうずまる杉木立ちほほえみかけているかもしれず
069:卒業  完璧なスピンターンの生徒らに卒業証書は授与されてゆく
070:神  腹いっぱいにならなくたって夜ならば神社の森にからすは帰る
071:鉄  鉄さびもリアルに再現されていてアニメーションの背景よろし
072:リモコン  リモコンのボタンの配置に怒るのは、そう、少しだけ酔ってるからだ
073:像  おぼろげに像をむすんでいるところ眠くなったら眠ってしまえ
074:英語  しかたなく読む取説の英語から立ちあがりくる韻律もある
075:鳥  わたり鳥、かも、かも、という駄洒落さえ哀しくなってくる流行歌
076:まぶた  音だけは仕方がなくて殺りくはまぶたの向こうで動きはじめる
077:写真  写真には念のため見る裏があり斜めに走る文字やるせなし
078:経  そらんじる般若心経意味なんてどーでもいーんじゃないかと思う
079:塔  あいうえお積み木の素材はブナだった塔をくずして城をつくった
080:富士  表富士周遊道路は明るくてスバルラインはキラキラさやぐ
081:露  朝露をくわえこんでるスギナの葉けっとばしたら星空だった
082:サイレン  サイレンがいきなりとまるまっぴるま芋虫たちはざわんとさわぐ
083:筒  竹筒に納まっているようかんは苦しいですか嬉しいですか
084:退屈  利根川に退屈という魚いて流れのままに大海へゆく
085:きざし  いつのまにか芽を出していた浜木綿に春のきざしを感じているぞ
086:石  海岸でひろった石に色を塗りしばらくしたら庭へとなげる
087:テープ  マスキングテープをはがすマスキングテープに付いた塗料とともに
088:暗  まっ暗な箱から星を取り出してちょうど良さげな空間に置く
089:こころ  床があり壁がありそして屋根があり窓と扉をもとめるこころ
090:質問  質問に答えられずにそのままに十年ほどを立ちつくす鳥
091:命  青い海夜になったら黒い海オレンジ色の救命胴衣
092:ホテル  側面にちいさな虹は描かれてホテルの窓からは見えにくい
093:祝  縁石にふたり座ってバスを待つ缶コーヒーで祝う一勝
094:社会  缶コーヒーばかりならんだ自販機が理想社会の果てに立ってる
095:裏  誕生日それは製造年月日 缶コーヒーの缶の裏がわ
096:模様  みずいろの水玉模様(カッキテキ)缶コーヒーに水玉模様
097:話  あったかい缶コーヒーを飲みながら御先祖様の話をしよう
098:ベッド  缶コーヒーと温州みかんと文庫本がベッドサイドにあればしあわせ
099:茶  このごろは好んで飲んでいるのです紅茶まじりの缶コーヒーを
100:終  さりげなく天にむかって傾けて缶コーヒーを終わらせましょう

101:(エピローグ)  五年前走りはじめたマラソンのゴール迎えて飲む缶コーヒー

    おまけ
  
088:(暗を膳に空目)  仏壇のエリアは窒息寸前で膳に盛られたそば乾いてる
093:(祝を視に空目)  缶コーヒーに描かれているおじさんの視線の先にある夏みかん
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by yuaruhi | 2007-08-02 21:33 | 短歌まとめ